宇宙暦800年のイゼルローン回廊の戦いが中断して和平交渉に向かう際にヤン・ウェンリーが暗殺された。ヤン・ウェンリーという精神的支柱を失ったイゼルローンでは、新たにイゼルローン共和政府を発足させ彼の妻であったフレデリカ・グリーンヒル・ヤンが指導者となった。
また軍隊のほうは「イゼルローン革命軍」という名前が付与されヤンの後継者としてユリアン・ミンツが選出された。ともにヤン・ウェンリーと最も関わりの深い人物であり、イゼルローンにいた首脳部の人間(キャゼルヌたち)が死後もヤンの威光をかりようとした姿勢が強くあわられている。
ただしフレデリカはヤンが死ぬまで軍人であり、さらに指導者といっても選挙で選ばれたわけではなかった。また政府機関の要職に就いた人物の多くは元軍人であったことを考えるととても「共和政府」とは言い難いものだった。
最も共和制の定義は曖昧なもので、広義では「君主制以外の政治体制を指す」と解釈されるのでそうした視点に立てば共和政府という名称は間違っていないのかもしれない。
イゼルローン共和政府の前身
ヤンの生前時イゼルローンにはロムスキー医師が立ち上げたエル・ファシル独立政府が存在した。しかしヤンの死によって動揺必至だったイゼルローンにおいて、もともと民衆の指示に薄いエル・ファシル独立政府では事態を収拾できないと考えたキャゼルヌの提案によってエル・ファシル独立政府は解体されることになった。
イゼルローン共和政府の解体
前身のエル・ファシル独立政府と同様、イゼルローン共和政府が存続した期間も短いものだった。ヤンの死後ユリアンらイゼルローン革命軍の活躍とラインハルトの意向によって帝国とのあいだに和平が実現したからである。
この和平案によって旧同盟の勢力はイゼルローン要塞を返還する代わりに、ハイネセンを含むバーラト星系の自治権を獲得した。これによってイゼルローン共和政府は解体され新しい政府が樹立することになった。