本作の主人公の一人。旧姓はラインハルト・フォン・ミューゼルと名乗っており、爵位を持たないライヒスリッターの身であった。幼くして母親を亡くしたため、父親のセバスティアン・フォン・ミューゼルと姉のアンネローゼとともに暮らしていた。母親が無くなった後にミューゼル一家は下町に移り住み、そこでジークフリード・キルヒアイスと知り合うことになる(隣の家に住んでいた)。
もともと他人と仲良くすることを嫌うラインハルトであったがこの赤毛の少年だけには好意を示し以来、友人として毎日のように友誼を深めることになる。そこに姉のアンネローゼも加わってラインハルト、キルヒアイス、アンネローゼの三人は幸せな幼年時代を過ごした。
しかしラインハルトが10歳になった頃、宮廷の役人の目に留まりその後宮廷へ召喚されることになってしまった。この事実を知ったラインハルトは激怒したが、さらに彼を憤慨させたのはこの時父親であるセバスティアンが役人から金銭を受け取っていたことである。これを見たラインハルトは「父が姉を売った」と考え、姉を連れ去った皇帝と同様に父親も憎むことになった。
この一件を機会にラインハルトは姉を救うために権力を渇望するようになり、そのために幼年学校に入って軍人になることを決意した。この時ラインハルトはキルヒアイスにその話しを持ちかけ、ともに幼年学校に入るように誘いキルヒアイスもこれに同意した。
これが将来、全銀河を征服することになる男の出発点だった。
軍人時代
幼年学校を主席で卒業したラインハルトは少尉を任官し軍歴を始めることとなった。通常、幼年学校を卒業した生徒の階級は准尉なのだが、ラインハルトが皇妃の弟という事情から特別待遇を受けてのことだった。この時以来、軍部においてラインハルトは「姉の七光り」によって厚遇されているとたびたび陰口を叩かれるようになる。
しかしそんな周囲の批判をよそにラインハルトは数々の武勲を立て昇進を果たすことになる。またラインハルトの軍歴は艦隊勤務だけに留まらず多様な部署に配属され、それぞれの場所で能力を発揮していた。幼年学校を卒業してからの最初の任務を惑星カプチェランカでの地上勤務でスタートさせその後、駆逐艦ハーメルンIIの航海長、軍務省での後方勤務、憲兵隊として幼年学校で発生した事件の調査などがあり、こういった多様な経験がラインハルトの能力と精神的骨格を成長させた。
ラインハルトがこのように様々な部署を経験した理由としては本人がそれを望んだことに加え、「皇妃の弟」であるラインハルトを煙たがった部署の責任者が栄転という形で厄介払いしようとした経緯があった。このことはラインハルトの昇進速度にも深く影響しており、「武勲が必ずしも昇進に結びつかない」帝国軍にあって20歳でラインハルトが帝国元帥に地位に就いた一つの要因でもあった。
キルヒアイスの死後
リップシュタット戦役後、長年の親友でもあり側近でもあったキルヒアイスを失ったことはその後のラインハルトの言動に少なからぬ影響を与えた。キルヒアイスが生きていた頃のラインハルトは激昂型の人間で、ことあるごとに不満を口にしてそれをキルヒアイスになだめられることが多かった。地位が向上してからはその激情が部下に向けられることもあり、アムリッツァ会戦でビッテンフェルトが失敗を犯した際はそのことで処断しよと考えていた。
キルヒアイスが生きている間はこういった行き過ぎたブレーキをかける役割を果たしていたが、彼の死後それができる人間がいなくなってしまった。しかしその後皇帝となってさらに権限が拡大したラインハルトは生前のキルヒアイスの言動を思い出すことで、自らの感情に歯止めをかけるように務めた。
そのため部下に対する態度も次第に変わっていった。このことはビッテンフェルトや他の提督たちも肌で感じており、以前なら処罰されるようなことに対しても寛容な姿勢を見せることが多くなった。
人物評
歴史上で唯一、全銀河を征服した人物。ルドルフは銀河連邦を政変させたに過ぎないため、征服という形で宇宙を手に入れたのはラインハルトしかいない。征服王に相応しく「常勝の英雄」と言われていたが、同盟軍の元帥ヤン・ウェンリーに対しては生涯で一度も勝利することができなかった。しかしそれ以外の戦いでは優れた戦術的センスと戦略的才能を見せつけて劇的な勝利を収めた。
軍事的な能力だけでなく政治能力にも優れておりわずかな期間で帝国の礎を築くことに成功した。さらに文武において有能な人材を収集することに余念がなく、自らの陣営だけでなく敵陣であったも優秀な人間に対しては積極的に登用を行った。
このように征服者だけでなく統治者としても優れた一面を見せていたラインハルトだが、その本質はやはり征服者であった。そのため好敵手であったヤン・ウェンリーとの決着をつけることを優先し、必要とは言い難い戦争を行っていた。さらにこういって好戦的な性格がロイエンタールの反逆を引き起こす遠因となってしまった。
人物ステータス
- ● 白兵戦
- ● 統率力
- ● 人望
- ● 決断力
- ● 分析力
- ● 権謀術数
8点。生れながら好戦的な人間で幼少期から同級生や上級生と絶えず喧嘩をしていた。そのため戦闘能力には長けていた。しかし幼年学校の戦闘訓練の成績ではキルヒアイスの後塵を拝している事を考えると、白兵戦に関しては超一流ではなかったようだ。
10点。作中最高。抜群のカリスマ性に加えて部下に対して公正明大な態度は統率者としての理想像だと言える。
10点。選民思想の強い門閥貴族たちからは憎まれていたが、彼のことを正当に評価する人間からは高く評価されている。ローエングラム陣営の人間からはもちろん、ヤン・ウェンリーを始めとする同盟側の人間からも敬愛されていた。
10点。英断や果断という言葉が最も似合う人物。その素早く正確な決断力によって敵に対して常に先手を取っていた。
10点。若干の欠点として細部に疎い部分があった。そのためレンネンカンプやロイエンタールに対する人事を誤った。しかしこれはメックリンガーの評で「望遠鏡が顕微鏡を兼ねていなかったからといって批判には当たらない」と言うように、それを補って余りある全局面的な分析力や観察力に優れていた。
9点。武の人であったため権謀術数は好まなかった。しかし覇権を手にしてそれを維持するためには謀略の類が必要であることも理解していた。実際、自身も謀略家として優れた手腕を幾度か見せており、オーベルシュタインを感心させていた。