同盟軍最高の名将ヤン・ウェンリーの異名の一つ。ヤンはこれ以外にも「エルファシルの英雄」や「ただ飯食いのヤン」などの呼び名も持っている。奇跡とも呼べるほどの軍事的成功を収めてきたヤンに対する最大級の賞賛の意味が込められているが、本人はこうした賞賛に対しては終始懐疑的だった。
「戦術面での成功は戦略レベルの失敗を補完できるものではない」というのがヤンの理論であったが、自らの成功の多くが戦術レベルに関するものであったため本質的には「奇跡」と呼べるものではなかった。
こうした理由からヤンは自分の成功に対して大きな評価をしておらず、またそれを過剰に賞賛する人間たちに対しても一種の不信感を抱いていた。
第7次イゼルローン攻略戦
第7次イゼルローン攻略戦以前、ヤンは「エルファシルの英雄」もしくは「ただ飯食いのヤン」と呼ばれることが多かった。しかし6度の大規模遠征の末に陥落させることができなかった不落のイゼルローン要塞を一個艦隊にも満たない戦力で、しかも味方の血を一滴も流すことなく占領することに成功したことにより、この奇跡とも言える戦術的成功を評して「魔術師」と呼ばれるようになった。
こうした世間の熱狂とは裏腹にヤンはこの時イゼルローン攻略に成功したのをもって、退役願いを提出しかねてからの夢だった退役生活に入ろうとしたがヤンの手腕を高く評価していたシドニー・シトレ元帥によってこの辞表は受理されなかった。